後日談

 

「このままだと、春高一次予選と研磨のヒートが被るかもしれねぇ」

 

インターハイが終わった夏休み、烏野バレー部は音駒高校バレー部監督の計らいで梟谷学園グループの練習合宿に参加していた。

そして3日目の夜、合宿に参加している5校の主将と副主将が集まり連絡事項などを共有する会議を開いていた。

その最後に、爆弾を落としたのが音駒の主将、黒尾鉄朗だった。

 

「……黒尾、いくら幼馴染でも人の生理周期知ってるとかキモいぞ」

 「あと、いくら僕らの事を信用していると言ってもこんな大勢の前でオメガのヒートバラすのはいかがなものかと……」

 

全体として仲の良い梟谷学園グループの主将たちの中で、比較的、黒尾と親しくしている梟谷の主将と副主将がいち早く反応を返した。木兎光太郎が素直に嫌な顔をし、赤葦京治が苦虫を噛み潰したかの様な顔をする。

音駒の副主将である海は、主将の突然の奇行にどう対応していいのか分からず、困った様な表情を浮かべた。

 

研磨と翔陽は恋人という関係になってはいるがまだ番ってはいなかった。

 

そして、二人が恋人関係になっている事をまだ当人たち以外は知らなかった。

そのため、音駒の主将である黒尾は他の高校の主将を巻き込んでこの二人をどうすべきかをこの会議で相談したかったのだ。

 

「あぁ、こういう事をあまり大勢の前で口にするのは良くないと分かっている。だが、俺達の脳が正常に働くためには必要な事なんだ。お前等、正直に言ってうちの研磨と烏野のチビちゃん、どう思う」

 

黒尾の真剣な表情に、黒尾がふざけているワケでは無い事を悟り、その場の全員が合宿中の二人の様子を思い浮かべた。

そして、まず困った様に口を開いたのは烏野の主将、澤村だった。

 

「進展は無い感じかな。日向も3か月以内には答えを出すって言ってたけど……」

 

ソレに続いて副主将の菅原も似たような表情で口を開く。

 

「仲は良いんだけどな。友情というか決めてに欠けるというか……」

「研磨は……。合宿中では無いけれど、烏野が最初にこっちに来た日、日向くんがいないってキョロキョロしてたしねぇ……」

 

続いて海がコメントすれば他の主将たちもコメントを始めた。

 

「おぉ!そう言えば最初ちょっと不調そうだった!」

「彼が来てから調子が良さそうだったな……」

「休憩時間よく一緒にいたな」

「5本だけだったが練習にも付き合ってたよな」

 「彼が5本練習に付き合うだけでも相当凄いんじゃ……」

 

二人が仲良くしているという情報は集まるがオメガとアルファの仲である様な情報は無く、一方的に研磨が翔陽に好意を抱いている様ですらあった。

実際はそんな事は無くても、翔陽の元来の社交的で活発な性格では研磨と仲良くしていても特別なことのようには感じにくく、逆に、人見知りが激しい研磨が苦手そうな性格である翔陽と仲良くしているのが珍しいという事が目立ってしまっていた。

 

「でも黒尾ー、そういうのは本人たちがどうにかするしか無いんじゃねぇの? だいたい、チビちゃんとお前んとこのセッターがくっついたとこでヒートの周期なんかどうしようもねぇじゃん」

「いや、恐らく、あのチビちゃんなら研磨のヒートを誘発させられる」

「は? そんな事ありえんの?」

 

初めて音駒と烏野が試合をした時、ソレは確かに起こった。

 

「医者曰く、運命の番なら何度かそういう事例はあるらしい。実際、最初に研磨とチビちゃんが会った日、研磨は周期から外れたヒートになった」

「マジかよ……」

「信じがたい事かもしれねぇがマジだ」

 

そこそこにオメガやアルファを抱えた各校の主将たちが新たな情報に驚き、ザワザワと声を出す。しかし、そこに現状をどうにかできる様な情報は含まれない。

 

運命の番同士でも実際に番わなければ意味がないのだ。

 

「だからさ! できれば早急にアイツ等にくっついて欲しいワケだよ!!」

 

チームの重要な戦力である研磨の体調が恋愛によって変わるかもしれない。

事の重大さはこの場の全員が分かることだが、内容が内容なため素直に賛同はできない。

 

例え、オメガとアルファであっても恋愛は個人の自由である。

 

黒尾としては、チームの戦力のためというよりも、スポーツの大会というアルファが集まりやすく、かつ興奮している場所へ、危険な状態の幼馴染を連れて行きたくないというのが本音だった。

大会中、本部や各校の先生や監督がしっかりと監視はしているが絶対に安心とは言い難い。大会の会場でナンパという話は無い事では無いからだ。

 

「もし、機会があったらちょっと気を遣って欲しい……」

 「まぁ、そのくらいなら……」

 

そんな会話をした翌日、視線に敏い研磨は今までに無い居心地の悪い思いをしていた。

 不躾に視線を遣ることは無くても何処か注視されている様な状況は気持ちが悪く、大きく体調を崩してはいないが普段よりも小さなミスを多くしていた。

 

敗けこそはしなくてもその不調さはチームメイトや恋人である翔陽には気付かれていて、昨夜の事を聞かされていた研磨以外の音駒のチームメイトは黒尾を睨め付けた。

そして、ワケも分からず注目され、気分を悪くしている研磨を注目されることには慣れている翔陽が休憩時に外に連れ出していた。

 

「……コレは、これで良かったのか?」

「良いワケあるか、この馬鹿! さっさと謝って来いよ!!」

 

音駒のもう一人のオメガである夜久が黒尾に蹴りをくらわした。

そのすぐ外で、研磨と翔陽が人目に付かない所まで避難していた。

 

「大丈夫か?」

「……うん。っていうか、今日何なんだろう」

「うーん……」

 

首を傾げながら昨日までと今日の違いを考えるも当然ながら翔陽には理由は分からない。

 

「俺と研磨……だよな。付き合ってんのバレた、とか?」

「……俺たち、まだ何もしてないんだけど」

 

付き合い始めてもまだ番ってはいない二人は、遠距離故に恋人らしいこともまだ出来てはいなかった。

互いに想いを遂げた日は翌日に葬式を済ませ、その日のうちに翔陽は宮城へと帰り、次に会えたのは東京遠征1回目、その時は周りの目もある中であり進展と言う進展は無かった。

 

そして、その時に日向と影山が喧嘩をしたため番うタイミングを逃したともいえる。

 

「つーか、いつ番う? ヒート来るの8月真ん中くらいだよな……もしかして春高予選と被ったりする?」

「……ちょっと怪しいかも。っていうか、前回ので一回狂ったと思うから今までと同じ間隔で来るか分からないんだよね」

 

溜息をつきつつ、研磨は手元のスマートフォンのアプリで排卵予定日やその周辺のヒートを確認する。

今思えば一回目の遠征の時は生理だったから番おうと思っても番えなかったかもしれない。と研磨は思い出す。

 

今は所謂生理明けという状態で、もう少し待てばヒートになるかもしれないがその頃には明後日宮城へと帰っていしまう翔陽は東京にはいないだろう。

 

「この合宿中に来ることは無いけど……番えばヒートは来るかもね」 

「うーん、でも合宿中はちょっと勿体無くね? せめて終わってからのが……」

 

そう相談していた時、不意に声が掛かった。

 

「お前等もう付き合ってたの!?」

「うわぁああ!」

「え、クロ……?」

 

それから話はトントン拍子に進んでいった。

 

猫又監督と鳥養監督、武田先生が話し合い、合宿後、翔陽だけ東京に残り3日後くらいに宮城に戻ることになった。

翔陽と研磨が番になることによってヒートが引き起こされるという前提の日程だった。

 

そして、翔陽と研磨の親にも連絡がいった。

双方の親ともそうなることは何となく想像はしていたらしく、合宿が終わった日に翔陽が挨拶に行くと逆に息子を頼むとお願いされてしまった。

 

そして、合宿翌日の現在、翔陽と研磨はホテルにいた。

 

 

 

 

 

「……」

「……」

 

 

朝、チェックインを済ませ、翔陽と研磨は二人きりで部屋にいた。

 

自主的にではあるが、二人が半ば軟禁されているのは、オメガのヒート用のサービスを備えたシティホテルだった。

丸々3日間の予約が基本で、周期がずれたり、長引く可能性があれば簡単に日にち単位で延長できるシステムになっているらしい。

その他にも色々なサービスがあるが今の問題はそんな事では無かった。

 

ベッドの上に二人、双方先にシャワーを浴び、その時に必要な処理は済ませて準備は万全という状態だった。

 

「えっと、じゃあ、噛むな……」

「う、うん……」

 

緊張気味に、翔陽は研磨の後ろ髪を掻き分けて、うなじを露出させた。

白い首は付け根の骨が浮き上がる程細く、翔陽は普段見えない艶めかしいソレに思わず生唾を呑みこんだ。

 

「翔陽……?」

  

思わずジッと見つめてしまっていたが、研磨の不安そうな声に我に返り苦笑いをした。

 

「悪い、あんまり綺麗だから見惚れてた」

「首が?」

「うん」

 

そう言いながらゆっくりと唇を近付けて、そこにキスを落とした。

軽くリップ音を立てて、すぐに離れてしまったソレに研磨は少し擽ったそうに身を震わせた。

 

「噛まないの?」

「いや、研磨緊張してるから……」

「ソレは翔陽もでしょ」

 

困った様に言いあってから、少し顔を見合わせて、二人はおかしそうにクスクスと笑いあった。

 

「今更、だな」

「だね」

 

翔陽が後ろからギュッと抱き付いて首筋に顔を埋めた。

研磨の髪からは少し甘いシャンプーの匂いがして、同じ匂いが翔陽からも漂っているハズなのにソレが酷く官能的なモノに感じた。

 

「アッ……」

 

うなじと同じ様に首筋にも軽くキスを落とせば研磨は驚いた様に声を上げる。

 

「もう、早く噛んじゃってよ……」

「……うん」

 

拗ねたように抗議されて、翔陽は研磨のうなじに歯を立てた。

 

「いっ……」

 

あまり痛まないようにと翔陽は一思いに噛みついたが、研磨は皮膚が引き攣る痛みに眉間に皺を寄せた。

そして、その痛みが一瞬で引いて、下腹部に衝撃が奔った。

 

「ア……」

「研磨?」

 

番う事によってヒートが誘発されるという予想はあっていた様だった。

ふわりと研磨のフェロモンが匂い、以前一度だけ嗅いだ、百合の花の様なソレが翔陽の鼻腔を霞めた。

それによって翔陽は全てを悟り、研磨の正面へと座り直す。

 

元々鋭かった目はトロンとして欲に濡れていて、先程まで緊張で冷たくなっていた肌は上気していた。

  

「大丈夫か?」

「う、ん……まだ、大丈夫。前より、平気」

 

余裕は無さそうであるがもうしばらくは正気を保っていられそうな様子に少し安心して、翔陽は研磨の着ていたバスローブを肌蹴た。

フェロモンに煽られても初めて会った時の様に理性が飛びそうになることは無く、どこか冷静に翔陽はこれからの流れを頭に思い浮かべた。

 

「ゴメン、もうちょい我慢して」

「うん……」

 

自分も着ていたバスローブを脱いで、ベッドサイドに寄せる。

首に手を回して抱き付いて肌を合わせると、研磨も翔陽の背中に手を回した。

 

どちらとも無く唇を寄せて、柔らかく触れ合い舌を絡めた。

 

「ふっ……んぅ…」

「アッ……ん……」

 

時折、鼻に掛かった様な艶めかしい声が漏れて、ヌルリとした感触に夢中で互いの唇を貪り合う。

暫くそうして、完全に夢中になってしまう前に翔陽が研磨の肩を押してキスを中断させた。

名残惜しそうに舌を軽く吸いあって、少しはれた唇に舌を這わせた。まだ足りないのはお互い様で、それでも理性が飛んでしまう前に翔陽にはしなければいけない事があった。

 

キスだけでトロトロになった研磨をベッドの淵に座らせ、自分は一度床に降りてから研磨の足を開かせて、その間に顔を埋めた。

 

「あっ……しょう、よ……?」

「悪い、もしキツかったら一回先に出して良いよ」

 

研磨のソレはオメガらしくつつましいサイズではあるが彫刻の様に綺麗な形をしていて、同性のモノだというのに特に嫌悪感も無くその先端に軽くキスをしてから、翔陽はソレを口に含んだ。

 

「あ……ンッ…」

 

歯を立てない様に注意しつつ舌を使って先っぽを咥えてから、一度口を離して裏筋や側面をペロペロと舐めた。

左手と口で研磨のソレに奉仕しながら、右手で先に横に置いていたローションのボトルを開けて手をベトベトにしてから自分のソレの更に置く、通常のアルファなら一生触れることも触れられることもないであろうその秘部へと手を伸ばした。

 

「んっ……」

 

シャワーを浴びた時に既に一度慣らしたソコはローションの滑りを借りて簡単に翔陽の指を受け入れた。

研磨のソレを口で奉仕しながら自分でソコを弄るという行為がどうしようもなく恥ずかしく、俯く様に研磨のソコへ舌を押し付けながら、右手は中を広げる様にグチャグチャと動かす。

 

「んっ、うぅ…っ」

 

頭の上からは研磨の我慢する様な甘い呻き声が聞こえて、その顔が見たいと思いつつも自分の顔を見られるのが嫌で奉仕を続けた。

 

「しょうよ、も……もぅいいからぁ。口、はな、して……?」

「ンっ」

 

頬に手を添えられ、優しく撫でられ、どうしようも無くなって口を離すと添えられた手で上を向かされ、発情してはいるがどこ冷静な研磨と目が合った。

  

「俺も、翔陽のこと触りたいんだけど……」

「……うん」

 

一度挿れた指を抜いてから、翔陽は研磨に跨る形でベッドの上に戻った。

 

「翔陽、辛くない……?」

「大丈夫」

 

ペタンとお尻をつけてしまうワケにもいかず、膝で体重を支えて翔陽よりも身長の高い研磨と同じ視線まで腰を上げた。

そして、もう一度研磨に抱きついてキスをする。

ギュっと抱きあって唇を貪りあっていると、翔陽の背中にあった研磨の手が少し下へ下がった。

 

「ぁ……」

 

ヤワヤワと双丘を揉まれ、細い指先が先程少しだけローションで濡らした秘部に触れた。

 

「あぁっ……けん、まぁ……ひゃぁああっ!」

 

触れていただけだった指先がナカに侵入した瞬間、今まで感じた言の無い衝撃が背筋に奔って、自分のモノとは思えない甘い悲鳴を上げた。

 

「しょうよ、かわいい……」

 

熱に浮かされたトロける様な表情はオメガらしく少女の様に愛らしいのに、夢中になって翔陽を犯す指先は容赦無く弱いところを突いた。

自分で触るのと他人に触られるのはやはり違っていて、止めどなく背筋を流れるゾクゾクとソコをかすめる度にまるで射精してしまったかの様に感じるナカのある一点の快楽に仰け反り倒れそうになる翔陽を研磨は背中に回した片手で支えた。

  

「けんまっ、研磨ぁ……! も、あぁ……っ」

「ゴメン、指、増やすね」

「ひゃっ……あぁああっ!!」

 

もう一本指を挿れると同時に、研磨は背中に回した手をグィっと引いて翔陽を自分に抱き付かせた。

ナカで蠢く2本の指にパニックを起こしかける頭を叱咤して、翔陽はぎゅうぎゅうと研磨に抱き付いた。オメガのフェロモンにあてられてるせいか、興奮が痛みに勝っているらしく痛みはほとんど感じない。

暫く2本の指でナカを弄られているとだんだんと余裕が出てきて、翔陽は研磨の勃ち上がったソレに再び手を伸ばした。

 

「アッ……」

「へへっ、やって…もら…ってぇ、あッ、ばっか、…だとぉ、アレだろ……?」

「ぁっ、駄目っ! しょうよ……まっ、あッ、あぁあああ!!」

 

筒状にした指で上下に擦れば研磨も再び悩ましげな声を上げて、散々弄られていたのにまだ一度も達していなかったソレは簡単に果ててしまった。

達した際にギュウっと抱き付いたせいで、放出されたどろりとしたソレがすぐ近くにあった翔陽の肌に掛かり、白い肌を汚した。

通常なら一回イケばその後は少し興奮が収まるものであり、一度落ち着くことが出来ると翔陽は思っていたが、研磨はオメガだった。

 

「え……?」

 

勢いよくナカに挿っていた指が抜かれ、視界が揺れて、ドサリと音がして、背中に柔らかい衝撃がして、天井と、欲情しきった研磨の顔が視界に映る。

膝立ちという不安定な体勢だったせいか押し倒される時は一瞬だった。

 

膝の裏と太ももの裏を掴まれて、大きく開かされた翔陽の足の間に、息を乱して、興奮が収まらないままの研磨がいた。

 

「(あ、ヤバい……)」

 

そう思った時には既に遅く、片足を研磨の肩にかけられ柔い尻を鷲掴まれ、一度イッたばかりであるハズの研磨のソレがズブズブと翔陽のナカに侵入してきた。

 

「あぁ……ふぁ、ぁ、ぁあぁあああ!?」

 

いきなり何の遠慮も無く犯された割にソコはしっかりと研磨を受け入れ、根本までしっかりと銜え込んでいた。

 

「ちょっ!? まっ、待ってぇっ…アッ、あんっ……!」

 

完全に据わった、欲に浮かされた目は先程までのソレとは全然違うモノになっていて、一度イッたことにより落ち着くどころか完全にスイッチが入ってしまっていた。

 

「やっ、やぁ…あっ、アッ、あぁ…あぁ、あっ……!!」

 

足と腰を掴まれ、遠慮なく抽送を繰り返されて、濡れた音が下腹部の方から聞こえて、あまり大きいとは言えなくても研磨のモノがナカで良い所をかすめる度に目の前に星が散る様な衝撃に襲われる。

 

「あっあ、しょう、よっ、しょうよぉ……、あぁ……っ」

 

研磨は研磨で発情期の興奮に完全に呑まれてしまっていて、翔陽を気遣う余裕は無いらしく、ただひたすらに翔陽を求めて腰を動かして快楽を追っていた。

 

「あっ、あんっ……けんま、けんまぁ…っ」

 

そんな研磨に、せめて自分がしっかりしなければと研磨に焦点を合わせれば発情した番の顔が視界に映って、またゾクゾクとしたモノが背中を奔る。ずっと屹立はしても決定力に欠けていたハズの翔陽のソレにドクリと血液が送られた。

ナカを擦られて揺さぶられ、決して小さくは無いアルファらしいサイズの、ヒトと犬の中間の形をしたモノが一回り大きくなる。ソレに気付いたせいか、翔陽のナカにある研磨のモノもまた一回り大きくなった。

 

「ふ、ぅ……あ…っ」

 

ソレでまたナカを擦られ、思わず力が入ってしまい研磨を締め付けてしまう。

そしてソレによってまた研磨が感じてしまいという循環を何度か繰り替えすうちに抽送は更に激しいものとなり、研磨は二度目の限界を迎えそうになっていた。

一度目は翔陽の腹部に掛けてしまい白い肌を汚したが、今や翔陽の腹部は自分のモノから溢れる先走りが先に掛けられた研磨の精液と交ざってドロドロになってしまっていた。ソレが腰を高く上げされるという体勢のせいで肌を伝い、胸の方まで翔陽の身体は汚されていた。

 

「あぁああッ……!」

 

視覚的興奮も相まって、研磨は翔陽のナカで再びイッた。

アルファと比べれば多くは無い精液の量でも、翔陽はソコに男のモノを受け入れるのも初めてならナカに体温よりも少しひんやりとした体液を注がれるのも初めてで、自分のナカに射精されたという事実に気付いて、ソレが何とも筆舌に尽くし難い興奮をした。

 

「あ……」

 

そして、その瞬間、アルファの性器の根元に付いているノット(亀頭球)が膨らむのを感じ、翔陽は血の気が引いた。

アルファの射精は10分から30分ほどかかる。その間ずっと射精している感じが続くため、翔陽はその感覚がすこし怖くて苦手だった。

 

「あ、ぁあああ……」

 

そして今、完全に理性を無くした番が自分を犯している。

もし、射精している間、ずっとナカを突かれてしまったらいったい自分はどうなってしまうのか。

 

覚悟はしていた。

しかし、実際に体験してみるのと想像していたモノでは衝撃が違う。

 

「ふぁ、あ…ぁぁぁぁああああああああああっ!?」

 

2度目の射精を迎えても勢いの止まらない研磨のソレが翔陽のイイトコロをガッツリ突いた瞬間、翔陽もまた絶頂を迎えた。

 勢いよく放出される精液が止まらず、その最中もナカを滅茶苦茶に突かれて、イイトコロをかすめたり、淵がめくれそうになるくらい引かれてから奥まで一気に貫かれたりして、触られても無い前の快楽とグチャグチャにされる後ろの快楽でギリギリまで保っていた理性が崩れていく。

 

「アッ、アッ、あぁあああっ」

 

止まらない精液でお腹から胸までドロドロに汚れて、生理的な涙や涎で顔もドロドロで、途中まではある程度我慢できていた声もいつの間にか嬌声が止まらなくなっていて、理性などどこにも無くなっていた。

翔陽がイキ続けている間も研磨は翔陽を犯し、何度もナカに精液を流し込み、二人がある程度正気に戻ったのは翔陽が3回目の射精を終えた後だった。

 

ズルリと翔陽のナカから研磨のモノが引き抜かれ、一度ベッドにぐったりと倒れ込んで、それでもまだ熱に浮かされた様に興奮が冷めずに、キスだけしつつ横目で時計を確認する。

 

午前から身体を繋げて、数時間。

時刻はまだ正午を過ぎた所で、この時点で大分消耗しているのにあと二日と半日近くこの状態が続くことに翔陽は少し頭が痛くなった。

恐らく体力切れで一度止まったこの時間を逃すワケにはいかず、名残惜しそうにちゅうちゅうと唇を吸う研磨をなだめて引き離して、ベッドのすぐ近くに設置してある冷蔵庫からゼリー飲料を取り出して研磨に摂取させた。

 

ヒート中のオメガはセックス以外の事がおろそかになってしまうのを何とかするのも番のアルファの仕事でもあった。

固形のモノをしっかりと食べるのと比べると身体に良いとは決して言えないがこの時期はこういったモノしか食べられないことは本で読んでいた。

 

食事を終えて、また研磨の体力が戻るまでベッドの上でダラダラと過ごす。この時間は研磨も理性は戻っているようで、翔陽に甘える様にくっつくだけで続きをしようとはしなかった。

 

肌を合わせて、唇を合わせて、体温を共有する。

翔陽としては一度シャワーを浴びて、精液でドロドロになった身体をどうにかしたかったが怠さが勝ってベッドから起きあがりたく無くなっていた。そして、起き上がれる程度に体力が戻った時にはまたセックスを再開しているのだろうと予想して思案する。

何か良い方法は無いか……。

 

「あ」

 

ふと思いついた方法に思わず声を上げるがソレを口に出そうか躊躇する。

 

「どうかしたの?」

「いや、えーと……」

 

研磨に不思議そうな顔をされて言いよどむも言ってみようという気持ちになった。

 

「いや、俺達ドロドロだから風呂入りたいなぁ、って」

「うん……でも、もうちょっとこうしてたい。っていうか、移動する体力、今無いよね。あと体力が戻ったら戻ったでまた翔陽の事襲っちゃうと思うし……」

「だからさ、体力が戻るギリギリのとこで風呂入って、そのままシちゃえばいいかなぁ、って思って」

「あぁ、じゃあマットひかないとだね。浴槽でしたら体力切れ起こした時点で溺れ死にそうだし……」

「おぉ、ソレは洒落になんねぇわ……」

 

ピロートークも何も無く、次の予定を立てる二人に色気は無く、ただドロドロのベッドで裸でグダグダしている事だけが色濃く情事のあとだという事を示していた。

 

「あと、2日と10時間くらいかぁ……」

「だね、ゴメンね。こんなのに突き合わせて」

「いや、俺達番だし。すげぇ今ダルいけどセックスは気持ち良かったし」

「あ、気持ち良かったんだ。良かった」

「うん、っていうか研磨は抱かれなくても大丈夫そう? そこだけ心配だったんだけど」

「うん、翔陽のナカすごく気持ちいくて他の事とか考えられなかったから大丈夫」

「おー、マジか。良かったわ」

 

ダラダラ、グダグダと時間が過ぎ少し体力が戻ってきたところでベッドから起きあがった。

 

「あ、腰大丈夫?」

「うん、まだ生きてる」

「良かった。もし運ばなきゃいけなくなったら途中で襲わない自信無かったから」

「研磨、結構肉食系だよな……」

 

ベッドから降りて、どろどろになった互いのありさまを見て少し笑って、二人はバスルームへと消えた。

そんな風に残りの時間も過ごし、無事3日目を終えて宮城に戻った翔陽が妙な色気を出し始め、周りを困惑させるのは別の話である。

 

 

 

  

 

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