「今ぁ、オレ、テーソータイ着けてんスよぉ」
「は?」
龍宮寺がとんでもない爆弾を落とされたのは定期的に開催される元東卍メンツ飲み会の帰りのことだった。
大きめの案件が終わって肩の荷が下りたのだと珍しくベロベロになるまで酔っぱらった武道に肩を貸し、他の誰かが送ると言い出す前に居酒屋を抜け出したのは偏に龍宮寺が武道を好いていたからであった。東卍の誰かが酔っぱらった武道に無体を働くなどとは思っていないがこんな状態の想い人を他の男に任せられるほど人間出来てはいないつもりだった。
そんな健気な男の気も知らず、武道は爆弾を落とし続ける。
「でもちょっとうっかりやめたくなってきちゃったのでぇ、鍵預けますね~。来週くらいまで持っててくださ~い」
何故かポケットに入れられていた鍵を雑に渡され、龍宮寺は取り落としそうになりながらソレを受け取った。
家の鍵でも無ければ自転車やバイクの鍵でもないソレはどこかチープで、それ故に今の武道の下半身がどうなっていて、ソレが本当にその鍵なのだと龍宮寺に感じさせた。
「じゃ、おやすみなさーい。気を付けて帰ってね~」
パタン、と閉められたドアを前に、龍宮寺は唖然とするしかできなかった。
と、言うのが2週間前の事だった。
アレから2週間、武道からの連絡は無い。当然だ。恐らく、武道はあの夜の事は覚えておらず、泥酔して誰かに送られたのだろうという認識に違いない。
まさかその相手に自分の貞操帯の鍵を渡したなどとは思うまい。
「……」
未だ、鍵は龍宮寺の手の中にあった。
学生時代からずっと好きだった男が、酩酊状態でとは言え預けてきた代物である。しかも、性的な部分を戒める器具の鍵。
ソレが手の中にあるというだけで龍宮寺は思春期などとうに過ぎたというのにうっかり股間を甘固くしてしまう。
コレを、自分が持っているのだと武道が伝えたらどうなるのか。
あの、愉快で色気の無い、少年がそのまま大人になった様な男はやはり涙目でギャーギャー騒ぎながら、当然返してもらえるものだという前提で謝ってくる様な気がする。それとも、羞恥に顔を真っ赤にして懇願してくるのだろうか。射精させてくださいと、三つ指を着いてくる想い人の妄想はあまりにも趣味が悪いと自覚している。
陰茎に触れられない今、武道はどうしているのか、二週間など平気で待てるという人間であるならばそもそも貞操帯などつけていないだろう。龍宮寺に鍵を渡した日の時点で既に辞めたくなったと言っているのだから、この二週間は武道にとっての地獄に違いない。
そんなことを考えて、熱い息を吐く龍宮寺は今日こそは武道にソレを返さなければならない、と何度目かの決意をする。
花垣武道とは連絡を取ればいつだってすぐに返事をしてくれる男である。渡したいものがあるから仕事帰りにでも寄ってくれ、と言えば空いた時間を見つけてすぐに駆け付けるに違いない。
なのに、ソレができなかったのは自分の持つ武道への後ろ暗い情欲の為であり、これをきっかけに関係が崩れるのを恐れた為でもある。
しかし、二週間ともなればそろそろそんなことも言ってはいられない。
オナ禁以前に衛生問題である。
意を決して、龍宮寺は武道の自宅へと向かった。
アポイントはとっていないが、今日はお互いに休日であるという事は知っていたし、武道は休日の午前は自室でぐーたらしている事がほとんどである。恐らく、いるだろう。
事前に連絡をしたら、もしかしたら逃げられてしまうかもしれない。
そんなことを考えて、ふと我に返る。逃げられるとは何だ、逃げられる、とは。
自分はあの日渡されたものを返しに行くだけであり、何ら後ろめたい所などない。
自分への苦しい言い訳に、男らしくない、とため息を吐いて、龍宮寺はバイクを走らせた。
♡♡♡
インターフォンなんて上等なものは付いていないチャイムだけのボタンを押して、龍宮寺は武道を待つ。
どうせ休日の午前の武道なんてパンイチでせんべい布団に包まっているに違いないため、呼び鈴を押してすぐにドアから出てくるなんて期待はしない。中から慌てた気配がするだけマシだろう。武道の性格的に居留守を使われても不思議ではないのだ。
バタバタした気配がドアの前で止まる。ちゃんと最低限ドアスコープを使ってはいるんだな、と龍宮寺は安心する。
自分の好きな奴が誰にでも無防備なのは、男とは言え少し心配だった。
そしてまた慌てた様にガチャガチャとドアチェーンが開けられ、鍵が開けられる。
「ドラケンくん!?」
ビックリした顔の武道は予想した通り緩いTシャツに緩い短パンで龍宮寺を迎え入れた。慌てて着たのだろうと想像して龍宮寺は苦笑いをした。まぁ着ただけマシだろう。
「朝から悪ィなタケミっち。ちょっと話があっから上げてくんね?」
「う、うん……。汚い部屋でよければ……」
部屋の汚さはドアが開いた瞬間から見えていたし、前々からであるので龍宮寺の知っている事だ。しかし、何故か、今日の武道の部屋はいつもより比較的マシだった。
布団は敷きっぱなしであるが、いつも散らばっているゴミはゴミ袋に入れられているし、その袋も台所周りに寄せられている。ゴミ出しをしていないのは朝起きれない故かゴミの日を把握していない故か。
ゴミの日というよりは曜日感覚が無いのかもしれない。かつての佐野も、学校に気分で行くせいで今日が何曜日なのか知らない事が多かった。今の武道も映画の助監督という曜日に縛られない故に固定休の無い仕事だ。
誰かに世話してもらわなければいつかこの汚い部屋でいつの間にか孤独死しそうで恐ろしい、と龍宮寺は考える。実際の所は友人や知人が大量にいてひっきりなしに連絡を取っているのでその未来は相当先の話であるが。
「テキトーにそこら辺座っててください」
「おー」
冷蔵庫を開けてお茶を出そうとする武道の指示に従って、龍宮寺はちゃぶ台の近くの座布団に腰を下ろす。
そして、自分に背を向ける武道をジッと見つめてしまう。主にその下半身を。
今も、その局部は戒められているのだろう。そう思うと何故か喉が渇いて、思わず生唾を飲み込んでしまう。古いアニメーションならきっと今の自分は酷く恐ろしい顔で舌なめずりをしているに違いない。昔、武道に見せられた映画にそんなシーンがあった気がする。
「……」
余計な事を考えた、と龍宮寺は頭を振る。
自分は先々週に武道から渡された鍵を返しに来ただけだ。妄想している様な展開にはならない、しないだけの理性がある。
学生だった頃、銭湯で見たよりも肉付きの良いだらしない身体になった。男らしいゴツさの残ったまま、むっちりと贅肉を付けた身体はオンナのソレとは全く違うものだ。
自分は武道の心根に惚れたのであり身体目的ではない。男の身体に欲情するというタイプではない。
そう脳内で繰り返し唱えながらも、その揺れる尻に目が釘付けになってしまう。
深く、呼吸をする。
落ち着け、落ち着け、と自分に言い聞かせる様に脳の中で繰り返す。
こんな劣情で失って良い信頼ではないし、過去に自身を何度も助けてくれた恩人に仇を返す行為になど踏み切るべきではない。
そんな龍宮寺の葛藤を知ってか知らずか、武道はペットボトルからコップに入れ替えただけの冷たい緑茶を龍宮寺の前に置いた。
「で、急にオレん所なんか来てドラケンくんはどうしたんです?」
「あー……ちょっと渡してぇモンがあってよ…」
「渡したいもの?」
歯切れ悪くそう言う龍宮寺の視線はちゃぶ台に置かれたコップにわざと注がれている。
揺れる尻が見えなくなった所で緩いシャツの上からでも分かるむっちりした胸部が目の毒だった。
案外、男がおっぱいを見ている時の視線は分かりやすい、と幼き頃の龍宮寺に教えてくれたのは当時勤めていた嬢の一人だったか。もう名前も思い出せないが、その教えだけは龍宮寺の中にしっかりと刻み込まれていた。
「コレなんだけどよぉ……」
ポケットから無造作を装って出した例の鍵。
ソレを見た瞬間に武道がガタリと大きく動揺する気配がする。その音に反射的に顔を上げれば、首から耳まで顔を真っ赤に染め上げ、瞳を潤ませた男が、そこにいた。
「ど、ドドド、ドラケンくん!? どこでコレを!?」
「前の飲み会の時。ちょっと預かってほしいと言われてそのままだったから……」
「そ、そっかぁ……」
ぽつりぽつりと話すその内容に嘘は無い。一週間預かってほしいと言われ、結局倍の二週間預かってしまった事については少しぼやかしたが。
そんな龍宮寺の言葉を武道は疑わない。
武道は龍宮寺を尊敬していた。自身の恥ずかしい、浅ましい部分をあまり見せたくないと思う程度には“可愛い後輩”でいたかった。
なのに、今、龍宮寺が差し出したのは自身の陰茎を縛る貞操帯の鍵。
何てものを何て人に渡してしまったのだと武道は脳みそが沸騰する様な思いだった。
自信を戒めるモノの鍵を無くしてから2週間。部屋の隅々まで探して、苦手な掃除までして見つからなかったソレは龍宮寺が持っていたのだ。
あんなカッコイイ人を自分の浅ましい欲に、無意識とは言え付き合わせてしまった!
後悔と興奮とが綯い交ぜになったまま、武道はその事実に胎の奥がズクンと疼くのを感じた。陰茎が戒められていても、自身の欲が無くなるワケではなく、それどころかどんどん浅ましい欲求が蓄積してしまうだけだった。
そうして、鍵が見つからずに、一時的に諦め、とりあえず他の欲の発散方法を模索しだした武道はこの数日で胎のナカを弄る方法を試しだしたところだった。上手くソコを刺激して達することができれば、前が戒められていても多少スッキリする事ができるのではないか、と。
しかし、初心者の武道には前を戒められたまま、後ろだけで絶頂するには至らず、常に火照った身体を持て余していた。
丁度、長期で休みになっていて良かったと、戒められた陰茎を慰められずとも尻の中を刺激すれば上手くイケるかもしれない、と今日も先ほどまで己を慰めていた所だった。胎のナカを洗い、尻をローションでトロトロに解して、自身の指で身体を慰めていた。
そんな武道の前に、現れた龍宮寺。しかも鍵を持ってきたのだ。
浅ましい妄想が頭を支配する。そんな事を考えてはいけない、と理性が叫ぶのに、いやらしい身体は鍵が他人の手にある事を悦んでいた。
「タケミっち?」
そんな武道の心情を知らず、龍宮寺は出方を考える。
まるでパブロフの犬の様に、鍵を見た瞬間に武道の身体が反応した。悪い事はしてはいけない、武道からの信頼を壊してはいけないと思うのに、その性的欲求に駆られ熟れた身体が自分を求めているのではないか、とイケナイ妄想に支配されそうになる。
羞恥に染まった頬に触れて、唇を奪ってしまいたい。とても甘美で、とても恐ろしい事だ。
しかし、ここにいるのは欲に濡れた男二人。
武道の身体はいやらしい器具からの解放の兆しに喜び、上気している。
龍宮寺の目だってもう、目の前の想い人の媚態に釘付けで、獰猛な本性を隠せずにいるのだろう。
いったいどこに遠慮する必要があるのか。
都合の良い妄想の様な甘言が脳みそを巡る。
そして、その妄想を肯定する様に、武道がゴクリと生唾を飲み込んだ。潤んだ瞳で、赤く売れた唇を薄く開く。
「オレ、この鍵、何の鍵、とかって、言ってました?」
「……貞操帯の、だと」
武道も怯え、そして期待している様だった。
本当に何のつもりもないのなら、いつもの様な明るい小物染みたノリで「探してたんです!やったー!またお礼しますね!」と頭を下げて鍵を受け取ればいい。
ソレをしないまま、鍵はちゃぶ台の上、龍宮寺の手元にまだ置かれたままだった。
「へへ、そっかぁ。言っちゃってましたかぁ、恥ずかしいなぁ……」
真っ赤な顔を手で仰ぎ、緩いTシャツの襟元をパタパタと波立たせる。わざとらしいその仕草で、唇と同じくらい熟れて色づいた箇所が見え隠れして、今度は龍宮寺が生唾を飲み込んだ。
ここまで来てしまえば長い付き合い故に、お互いが何を考えているのか何となく分かってしまう。
都合の良い妄想などではなく、目の前の後輩は自分に食べられてしまいたいのだ、と。
そして、自分の欲情も恐らくバレてしまっている。
もう、いい兄貴分の皮を被っている必要も無い。
「なァ、そっち行っていいか?」
「……は、い」
同意も取れた。
ちゃぶ台の向こう側、武道の座る布団の傍へと、龍宮寺は腰を上げ歩を進める。
期待の隠せない顔の男が、上目で龍宮寺を見つめていた。
♡♡♡
武道の真横に座り、思う。これだけ近いのは学生時代以来だろうか。あの頃はもっと触れ合っていた。後ろから抱き締めたり、肩を組んだり、他意の無い触れ合いが当たり前だった。あの頃から好きだったのに、今になっては触れ合いそうな距離に座るだけで緊張するなんて不思議な話だ。それだけ、大人になったという事かもしれない。
触れる、触れるとはどうやってするものだったか、思わずそんなことを考えてしまう。過去、自然にしていた事が今はどうしていいのか分からない。
「っ」
そんな龍宮寺の心を知ってか知らずか、ぽてり、と武道が龍宮寺に体重を預ける。
飲み会で酔ったフリをする女がお持ち帰りを狙う様な姿勢にドキリとする。持ち帰りも何も、ここは武道の自宅であるが。
「ふふ、ドラケンくんが持っててくれたおかげで気が抜けちゃいました。ずっと探してたんです、ソレ」
「……あぁ」
「部屋の中ゴチャゴチャに探しまくって、変なことろに入り込んじゃってないかゴミとか一個一個検分しながらゴミ袋にいれてましたし」
「部屋の片づけは普段からした方が良いぜ」
「もう! そういう話じゃないでしょう!」
龍宮寺の返答に、詰る様に武道は腕にギュウギュウと抱き着く。あざといオンナの様な仕草が自分のためにしているのだと思うと脳みそが沸騰しそうだった。
「ハハ、悪ィ悪ィ」
「んっ」
乱雑に頭を撫でて、そのまま頬を撫でる。ソレが気持ち良かったのか喉奥から甘えた様な声が上がる。
猫の様に龍宮寺の手に縋るのは火照った身体に刺激が心地良いからだろうか。大きな手が頬だけでなく、小指の先で首筋を擽ればビクリと腰を震わせた。焦らさないでほしい、と武道がジッと不満げに龍宮寺を見つめる。
その熱に浮かされた、半開きの唇に、龍宮寺は容赦なく食らい付いた。
「あ……」
柔らかだけれど少しカサついた感触が武道らしく、リップクリームを贈ってもあまり意味は無いだろうなと頭の隅で考える。行儀よく閉じられた瞼は広く、目じりは紅潮していた。
数度唇を食み、空けられた隙間から舌を侵入させればピクリと肩が震え、眉間が強張る。
性的な事に興味はあるし、貞操帯なんて玩具を使う程度には遊んでいる様だが、対人経験はあまり多くはないのだろう。
中学の頃に一度だけしたという大恋愛が忘れられないから恋人はまだ要らない、と未だに見合いや紹介を断り続けている男だ。一途で、ロマンチストで、理想が高いのだろう。
自分だって、こんな絶好のチャンスが訪れなければもう二度と肌を触れ合わせることなど無かったハズだ。
しかし、もうそんなに時間が経ってしまっていたのだ。
コレはもう粘り勝ちと言っても良いのではないか。だって、ずっと好きだったのだ。
武道が中学の頃にしていたという女子への大恋愛の内容は全く知らない。知っているのは東卍の中でも万次郎だけで、武道はそんな素振りは見せなかった。
しかし、その女子とやらは今、武道の隣にはいない。代わりに、自分がこの男とキスをしている。ソレが全てなのではないか。
舌を絡め、上顎を擽り、大きくも小さくも無い口内を蹂躙する。
唾液が溢れて、いやらしい水音が室内に響く。けして、閑静な住宅街などではない。外からは車やバイクの排気音が聞こえる中、それでも、この部屋の中だけが非日常で、妙に暑かった。
柔らかな粘膜を擦り合わせながら、緩いTシャツの裾に手を侵入させる。
ビクリとまた震えるような反応をしたが、ただ驚いただけで嫌がる素振りではない事に安心する。尻と同じように胴体にもむっちりと肉が付いていて、火照って汗ばんだしっとりとした感触がした。
「ひぁっ……」
いきなり揉むような事はせず、表面を指先で辿れば今度こそ驚いたのだろう。パチッと目を見開いて腰から肩までを跳ねさせる。侵入させていた舌がずるりと抜けて、キスが途切れてしまった事が少し前年だったが、武道の反応が可愛かったので龍宮寺は少し溜飲を下げた。
「嫌だったか?」
「いやじゃ、ないです……」
わざとそう聞けば武道はますます恥ずかしそうに龍宮寺から視線を逸らす。
そういう反応が未通っぽくて、龍宮寺の劣情を煽っているのだと夢にも思わないのだろう。
「じゃ、続きするわ」
「ん……っ」
今度は唇ではなく、耳元に触れるだけのキスを落とす。空いた両手はまた服の下へと忍び込ませ、今度はその手の感触を覚え込ませるようにしっかりと触れる。
腹周りのもちもちとした感触を楽しんでいると鍛え続けていない事を恥ずかしがるように、武道はむずがる。しかし、龍宮寺がその感触を楽しんでいる事を分かっているせいで本気で拒めない。まるで小さな子どもの様な反応だった。
そのくらいの抵抗であるなら問題ないだろうと腹を揉みつつ、耳元へわざと濡れた様な音を立てながらキスを続ける。内臓が詰まった腹を弄り過ぎて気分が悪くなってしまってもいけないため程々の所で胸に手を移動させようと思いつつも、性的な意味とは別に恥ずかしがる武道が可愛くてどうも揶揄いたくなってしまう、と少し反省する。
耳介を食みながら手を滑らせ、こちらもむっちりとした胸を柔らかく揉み込む。
開発されていない乳腺はまだ簡単に色好い反応を見せてはくれなかったがこれから開発する事ができるのだと思えば喜ばしいものだった。
武道は武道で、直接的ではない箇所への刺激に焦らされつつも、龍宮寺に唇や耳を食まれ、肌に触れられるというシチュエーションに興奮していた。
武道にとっての龍宮寺は男の中の男であり、頼りになる兄貴分だった。その龍宮寺を性の対象として見るなどいけない事だと思うのに、龍宮寺からの欲を感じ取ってしまってからはダメだった。
男に抱かれたいなどとは思わない。
されども女に欲情することも無くなってしまった。
愛した女を諦めると決めた。その心を吐露する先は同じ記憶を持つ佐野だけであり、佐野からは反対もされたが、一度決めると梃子でも動かないのが武道という男だった。
少女を諦めてからというもの、武道は愛と性欲が結びつかなくなった。
性欲の解消を他人に求める事がなくなり、けして淡泊ではないにも関わらず、性欲処理の手段としてセックスをしたいという気持ちが湧かない。そんな武道が趣味のオナニーに貞操帯を使用し、その鍵をうっかり無くした果てに、己に欲を向ける男が龍宮寺だったのはいっそ運命だったのかもしれない。
他の男であれば、武道の矜持が邪魔をし、抱かれるなどという選択はしなかったに違いない。
龍宮寺が自分に欲情したのであれば、ソレは案外悪くはない事ではないのではないか、と今まで忘れていたセックスというものを武道に思い出させた。自発的にはもう二度と思い出せなかったであろうソレは、自身がとてつもなく欲情した上で、抱かれてもいいと思える程の相手から欲を向けられなければ成立しなかっただろう。
覚えている限りセックスなど初めての行為であったため、誘い方が不自然になってしまったのはご愛敬だと思いたい。それでも、龍宮寺がちゃんと乗ってきて、今、こうして肌を触れ合わせているのだから上出来だと武道は思う。
「ん……は、ぁ…」
耳を食んでいた唇が首筋へと降りていって、チュムチュムと吸い付く。それほど強く吸い付かれていないため鬱血はしてないだろう。あまり襟の詰まった服を着ない武道への配慮だろうかと気付きつつも少しだけ残念だった。
胸に触れていた手は一度離れ、服を脱がせる動きになっていたため武道は大人しく協力的に動く。万歳でTシャツを脱がされるなどいつぶりだろうと考えると少しだけ気恥ずかしい気持ちになるが、龍宮寺の眼前に自分の胸が晒されるとソレ以上の羞恥心に襲われた。
「あ……♡」
胸の尖りを見る龍宮寺の視線が熱を帯びていて、武道はソレだけで胎の奥がキュンと疼く。まだ直接触れられてはいなかったのに、そこはぷっくりと期待に膨れていた。
自慰の一環で自分で触れていたが、そこまで快感を拾う事の無かった箇所だったのに、雄を前にして浅ましく愛撫を強請っていた。ソレが恥ずかしくて、その羞恥が妙に気持ち良くて、武道は頬を真っ赤に染めて視線を逸らす。それでもその鴇色の尖りを隠さないのは龍宮寺に見られ、欲情される事を望んでいるからだった。
「ドラケンくん……もう…」
触れてくれ、そう強請ってしまいたい武道の気持ちを龍宮寺も分かっていた。直接強請られたい、という気持ちがありつつ、しかしソレを処女の男に求めるのは酷と言うものだ。
「あぁ……」
だから龍宮寺は頷いて、ゆっくりと武道に触れる。まずは先ほどと同じように胸の外側から乳腺を揉み込む様に、しかし、親指はしっかりとその色付く箇所に触れていた。無心で胸を揉むなど恰好が付かないと妙な矜持から、龍宮寺は再び武道の顔にキスを落とす。
キスをされるのが嬉しくて、同時にその大きな手で自身の胸を揉まれると武道はゆったりとした心地よさに身体が蕩けそうになってしまう。自身のすぐ後ろには敷きっぱなしの布団があって、龍宮寺が来る前まではここで自慰をしようと尻を解していた。
ここまでお膳立てされたシチュエーションなのだ。思い切らねば男ではない。そんな妙な高揚感が武道を大胆にさせた。
自身にキスをする龍宮寺の背中に腕を回し、引き倒す様に力を入れる。
「おう……」
武道の意図を察して、龍宮寺は片手を武道の頭の後ろに回す。
ゆっくりと仰向けになった武道は今度は自分から龍宮寺の首筋にキスをする。キツく吸い付けば少しだけ赤い痕がついて、しかし明日には消えてしまうだろう程度のものだ。ちゅむちゅむとお返しの様にキスをして、行為の続きを強請れば龍宮寺はそれに煽られた様に手の動きを大胆にする。
「あんっ♡♡♡」
きゅむ、と膨らんだ乳首を摘まむと武道は一際甘い声を上げる。自分では上手く感じられなかったが、龍宮寺の手でならそこは簡単に性感を得る場所に変えられてしまうらしい。
「んっ♡ どらけ、くん♡♡♡ そこ好き♡♡♡」
もっと、と強請る様に背中に回した手で龍宮寺を抱き締める。ある程度の隙間は残しておかなければ触れてもらえないと分かっているが、武道のおねだりハグ程度で潰れる龍宮寺ではないとも分かっている。
「はは、タケミっち、乳首好きなのか」
「うん♡ 好きっ♡♡♡ ドラケンくんの指でえっちされるの好きぃ♡♡♡」
「は……ッ」
硬くなった芯を揉みつぶす様にグリグリと刺激をして、緩急をつけて引っ張れば武道はその大きな瞳を快感に潤ませて見開く。途中から背中に腕を回す余力がなくなったのか、腕を投げ出し、シーツを縋る様に掴む。白い喉から腰までを、まるで龍宮寺に差し出す様に逸らせる。
尻をシーツに押し付ける様に腰が引けているが、そこに龍宮寺の勃起したモノが服越しに押し付けられる。自身の、戒められ、小さくなったソレとは違う、雄の逸物だ。そんな状況にすら武道は感じてしまって、甘く悲鳴を上げる。
「っ♡♡♡ あっ♡ あぁっ♡♡♡ しゅごい♡♡♡♡♡ きもちぃ♡♡♡ きもちぃれしゅぅ♡♡♡♡♡」
「ッ……」
何ができるワケでもないのに、龍宮寺の怒張に擦りつける様に腰を揺らす。
そんな武道の煽るような腰使いを咎める様に、龍宮寺がギュウっと乳首を引っ張った。
「あっ♡ あぁああああアアッ♡♡♡♡♡」
その瞬間、今まで感じた事が無いような快感のスパークが武道の脳みそに奔る。
チカチカと何かが視界で明滅して、あまり明るくない照明ですら眩しく感じる。気持ちいい、ソレしか考えられず、感じられない。そんな武道の淫らな様子に龍宮寺はまた、生唾を飲み込んだ。
「えっろ、乳首で雌イキしてんのかよ……」
「は、へぇ? んうぅっ♡♡♡」
半開きの口から涎が垂れて、真っ赤に染まった唇と口内が艶々と光る。熟れた果実の様なソレに噛み付いて、再び口内を蹂躙する。そして今度は龍宮寺からガツガツと打ち付ける様に腰を揺らした。
直接的な快感はキスだけであるのに、服越しにすら分かる龍宮寺の熱くて大きな逸物が、情けなく戒められた自身のおちんちんを虐めている様で、武道は簡単に二度目の絶頂を迎える。
一度してしまった雌イキが癖になってしまった様で、もう武道は何をされても絶頂しか出来ないイキ人形状態だった。
そんな状態に気付いてか気付かないでか、龍宮寺は唾液でドロドロになった口内から舌を抜いて、武道を押し潰していた上体を上げる。まだ上半身しか脱がせていないのにレイプ後の様な有様の武道に、龍宮寺は視界だけでイキかける。
「ワリィ、やり過ぎたわ……」
「は、へ……♡」
龍宮寺の言葉が聞こえているのかも分からない状態の武道に、一瞬だけここでもうやめておいた方がいいのではないかと良心が咎めたが、相手も望んでこの状況になったのだと思い直す。
腰を上げる事もできない武道だが、着ていたのが緩い短パンであったため簡単に脱がせてしまえた。腰回りから尻、脚とむっちりと付いた脂肪が柔らかく、ズボンを脱がせるだけでその感触に興奮してしまう。
そうして露わになった下半身は、艶々とした銀色の貞操帯に戒められ、力なく垂れ下がっていた。そしてそんな可哀相なおちんちんはダラダラと透明な液体を垂らし、雌イキの快感に屈した様を見せている。
けして小柄ではない、男らしい見た目の武道の男性器がそんな状態であるのを見て、龍宮寺は一瞬だけ冷静になりかけた自身のモノが再び硬くなるのを感じる。
「じゃあ、外してやるからな……」
武道が自分の声など聞こえていないのを分かりつつ、龍宮寺は声を掛ける。小さな南京錠に、小さな鍵を差し込み、カチャリと回せば数週間戒められていた陰茎はあっけなく解放された。それでも、勃起する様子は無く、だらだらと愛液の様なカウパーだけが垂れ流される。
「はは、かわいそ。勃起させてやろうか?」
「へ? ぁっ♡♡♡」
やっと呼吸が整ってきた武道はその龍宮寺の言葉に反応できなかった。そのせいで、制止する間もなくぱくり、とおちんちんが食べられてしまった。
「んにゃぁあああああっ♡♡♡ やっ♡ らめぇえええっ♡ いまおちんちんらめぇえええッ♡♡♡♡♡」
ほとんど悲鳴のソレが室内に響く、普段なら考える近所迷惑など今の武道には考えられない。龍宮寺も、目の前の想い人のいやらしい身体を堪能する事だけを考えていた。
「あっ♡ あっ♡ らめぇ♡♡♡ も、おれのおちんちん勃起しにゃいからぁッ♡♡♡♡♡」
ジュルジュルとカウパーを吸われ、ふにゃふにゃのソレが龍宮寺の口の中で弄ばれる。
ポークビッツとまでは言わないが成人男性のモノとしては小さめだ。半分だけ被った皮の中に舌をねじ込まれ、全てを舐られる。
武道がそんなおちんちんに気をとられているうちに、龍宮寺はその更に奥、既に自身の手で解され、雌イキの愛液が会陰部を伝ってオンナの様に濡れた孔に指を伸ばした。
「んぉおおっ♡♡♡♡♡」
つぷん、と指を挿れられただけで、また武道が絶頂する。今まで挿れていた自分の指とは違う、硬く節くれ立ったソレがナカを拡張する様にグリグリと肉襞を虐め、既に解れていたそこに龍宮寺は武道の一人遊びを悟る。
「はは、タケミっち自分でここ弄ってたんだな。しかも、俺が来るまで」
「あぁっ♡ らってぇ♡♡ おちんちんっ♡♡♡ イケにゃいからぁああッ♡♡♡♡♡」
「エロい奴……」
今更、他の男の影など疑わない。
その異常なまでの一途さを理解している龍宮寺は、自分以外で、かの大恋愛相手の女子の外に身体を許すワケがないと理解していた。ありえるとしたら佐野が考えられるが、佐野の動向は自分が一番知っているし、佐野から武道に向けられる感情が“欲”ではない事も理解している。
大方、貞操帯が外せない事で他の発散方法に手を付けただけだろう。2本、3本と簡単に飲み込んでしまう蕩けた孔には苦笑いで欲情してしまう。思い切りがよく、決断が妙に早い男だ、と。
「前立腺弄ってもちんこ勃たねぇ処か涎しか垂らせねぇのな。かわいー」
「んにゃぁ♡♡♡ 言わないれぇ♡♡♡♡♡」
「ほれ、ここ。こんなコリコリになって、胎んナカ立派な性感帯じゃねぇかよ。指レイプ気持ちいいな?」
「あっ♡ あぁっ♡ ちがっ♡♡♡」
「何が違うんだ? ここ、もうちんこ挿れるためのエロ孔じゃねぇか」
挿り口からそう深くない場所で存在を主張する箇所を指で挟み、ごりゅごりゅと揉み潰せば武道はシーツに縋りつきながら大粒の涙を流して悦ぶ。ソレなのに、こんなにも快感に蕩けた身体で、まだそんな羞恥心や意識があるのかと感心しながら会話をすれば、武道はキッと今日一番の強い眼光で龍宮寺を睨んだ。
「レイプじゃないもんっ♡♡♡」
「……」
「おりぇっ♡♡♡ ろらけんくんとえっち♡♡♡♡♡ してるんだもんっ♡♡♡ れいぷじゃないもんっ♡♡♡♡♡」
涙を湛えきれずにボロボロと零しながら癇癪の様に喚く姿はまるで子どもの様で、しかし、その口から語る言葉は大人そのものだった。そのギャップが何だかグッと来て、同時に自分の言葉責めが幼稚に感じてしまう。
「あぁ、そうだな……」
少しだけ冷静になって、龍宮寺は思い直す。せっかく長年の想い人と身体を繋げられる機会を得たのだ。とことん可愛がろう、と。
「ワリィ、調子乗ったワ」
「はへ……? ひゃんっ♡」
「なぁ、もうかなり解れてんだ。挿れて良いか?」
ぐにぃ、と指で挿り口を指で押し広げれば武道の後孔は素直に大口を開ける。赤く熟れて、龍宮寺を食べたいのだと涎を垂らしている様だ。
耳許で許しを請えばその低い声に震える耳介から鼓膜までがゾワゾワと快感を拾ってしまう。
「俺もお前とセックスしてぇんだ。お前と一つになりてぇ。なぁ、頼むよ。お前の中に入らせてくれよ」
「うんっ♡ あっ♡ は、ぁ♡♡ おれも♡ ドラケンくんとえっちする♡♡♡ らいすきだからぁっ♡♡♡ 来てぇ♡♡♡♡♡」
身体を近付けた龍宮寺の首に腕を回し、武道はぎゅうっと龍宮寺に抱き着く。
そうして、甘える様に何度も頬にぷちゅぷちゅとキスをする。ませた幼稚園生の女児みたいなソレは快感によって退行でも起こしている様で、意地悪をしてしまった事に少しだけ罪悪感が湧いた。
「あぁ、少し苦しいかもだけど、頑張れよ」
「んっ♡ んうぅっ♡」
片手で包み込む様に頬を撫でて、痛みや苦しさを誤魔化せる様に口づける。
そしてずぬり、と後孔に陰茎を挿入した。しっかりと覚悟をしていてもやはり体内に長大なものを挿れられる衝撃は大きく、武道はビクリと身体を震わせて、キスをする龍宮寺の背中に縋りついた。
「んぐぅっ♡♡♡ んぅうううううっ♡♡♡♡♡」
ナカの襞や前立腺をこそぐように亀頭から雁首までが侵入し、そのまま奥へと入ってくる。長い事解されていたせいで痛みはほとんどなく、奇妙な圧迫感だけが胎のナカにあった。
皮膚程感覚器官は発達していないのに、そこに龍宮寺のモノがあるのだと思うと、龍宮寺とセックスをしているのだと思うと、堪らない気持ちになる。
「ドラケンくん♡ 入ったね♡♡♡」
「おー、まぁ半分ちょっとだけどな」
「ん♡ いいよ♡ 全部入れて♡ ドラケンくんの全部ほしい♡♡」
「苦しくねぇか?」
「大丈夫だよ♡♡ ドラケンくんのおっきいので俺のナカいっぱいで嬉しい♡」
首筋に頬ずりする様に懐く武道を見て、まだ余裕がありそうだと龍宮寺も判断する。内臓は繊細であるが鈍感な器官でもあるため傷付けない様に注意を払う必要がある。しっかりと様子を見ながらではあるが、セックスは続行できるだろう。
はふはふと浅い呼吸を繰り返す様はいかにも辛そうではあるが何度も射精せずに絶頂したのだからそうなるのも無理はない。そして今の様子を見るに、おそらく武道は龍宮寺がナカでイカなければ精神的には満足しないだろう。
今の武道がしたいのは射精では無く、龍宮寺とのセックスであるのは明白だった。
「は、ァ……。もう少し、挿れるからな」
「ん……♡」
正常位での肛門性交のため、脚を担ぎ尻まで上げさせる無理な態勢であったがお陰で、抱きしめて腕の中に閉じ込める様にするだけで奥へと侵入できる。バックからの方が良いかと何度も考えたが、武道から抱き着いてキスをしてもらえるのが嬉しくてそのまま挿入してしまった。
武道が小柄なのではなく龍宮寺が大柄であるため、キスをするためには思い切り背中をまるめなければならないが、それでも目の前の幸せそうな、快感に蕩けた顔が見れるのなら前からして良かったと龍宮寺は思う。
ゆっくり、慎重に奥へと入って行くと途中から恐らく未開だったであろう締まった箇所を通って、こちゅん、と最奥に突き当たった。恐らく結腸の入り口だろう。根本数センチ残しているが、これ以上は今日はまだ挿れない方がいいだろう。この奥はもっと慣れてから挑戦すればいい。
一度身体を繋げてしまえば、恐らく“次”を得るのはそう難しくないだろう。
「奥まで、入ったな。大丈夫か?」
「らいじょうぶぅ♡」
圧迫感による疲れや息苦しさはあるのだろう。少しだけぐったりとした様子で武道は答える。それでも表情は嬉しそうに蕩けているのだから堪らなかった。
「ゆっくり動くからな」
「ぁい♡」
動きやすい様にくっ付けていた身体を話して、武道の足と腰を支える様に持つ。ドロドロに濡れて温かいナカは既にローションか何かを仕込んでいたのだろう。キュウキュウと龍宮寺を締め付け、腰を退けば、出ていかないでとばかりに肉襞が引き留めてくる。
名残惜し気な襞を慰めつつ陰茎を雁首ギリギリまで引き抜き、トチュン、と先ほどの最奥まで押し込む。
「ひ、ぁ、ああああアアアアっ♡♡♡♡♡♡」
分かってはいた動きであったが、前立腺を押し潰し、ナカを蹂躙しながらの侵攻に武道はまた雌イキしながら背筋を反られて嬌声を上げる。
ゆっくり抜いて、勢いよく挿れる。胎のナカを耕す様に角度を変えて、武道のナカが龍宮寺とのセックスで気持ち良くなれる様に作り変えていく。そんなことをしなくても、龍宮寺とセックスをしているというだけで武道は気持ち良くなってしまっているが、ソレに加え、肉体的にも気持ちよくなってほしい。
結腸口に何度もチュムチュムと鈴口でキスをして、だんだんと抽挿を早くしていく。
その律動に合わせて、武道はまるでそういう玩具のように甘い声を上げた。もはや言葉の体を成していないソレはズンズンと繰り返される胎への衝撃への反射でしかなく、龍宮寺を聴覚から興奮させるだけのものだった。
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ んっ♡ あっ♡」
その律動に慣れて来た頃、武道は龍宮寺に手を伸ばす。抱きしめてほしい、もしくは手を繋ぎたい。その要望に、龍宮寺は腰を掴んでいた手を離して武道の手と繋いだ。
ばちゅんっばちゅんっと嫌らしい水音が狭い室内に響き、セックスもラストスパートで熱気が籠る。
「しゅきっ♡♡♡♡ ろらけんくっ♡♡♡ らいしゅきぃっ♡♡♡♡♡」
「おう、俺も愛してるぜ、タケミっち……ッ」
「きちゃっ♡♡ きちゃうぅっ♡♡♡ ぁ♡ あああぁあァアアアア♡♡♡♡♡♡」
「ん、ぐ……ぅ…」
一定のリズムに高め上げられ、武道が限界を迎える。
絶頂によって痙攣するナカで、ゴチュンッ、と最奥に先端を押し付けて、ビュルッと射精する。ビクビクと震える陰茎の余韻を感じながら、やはり手繋ぎだけでは足りないと武道は龍宮寺の背に腕を回し抱擁を強請る。
「は、ぁ……♡」
まだ締まったままの結腸口に龍宮寺の精液が流れ込む姿勢ではあるが、どうせ腹を壊してもしばらくは休みなのだと思えばこの充足感に変えられるものでもない。
龍宮寺の逞しい身体を全身で感じ、耳元に感じる荒い呼吸にゾクゾクする。
「……」
初めてのセックスに大満足だったが、この後どうしようか、と武道は早くも賢者タイムに襲われていた。できる事ならこの先も龍宮寺と身体を繋げる関係でいたい。
気まずくなって友達ですらいられなくなる、なんて事には恐らくならないだろう。
どうやって誘惑するかなぁ、なんて事を考えながら事後の倦怠感にまどろむ武道は知らない。
次に目を覚ました時、龍宮寺に責任をとらせてくれと迫られる事を。返事に困っている間に他の東卍メンバーに根回しされて、龍宮寺と付き合う以外の道が無くなっている事を。
今はただ、龍宮寺の逞しい腕の中でまどろんでいるだけだった。
END