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英雄色を好むとは言うけれど


武道が壱番隊隊長に就任して数回の抗争を経た頃。武道の人命を優先するという信念が嘘偽りないと伝わり、ソレに賛同する者が付き従い、もっと暴れたいと願うものが他の隊に移動したりなどした頃の休日。
武道は佐野真一郎の経営するSSモータースへと遊びに来ていた。

武道が万次郎に双子のバブを貰もらうのは聖夜決戦の後だと記憶しているため、今はバイクを持っていない。そのため、お小遣いを溜めてバイクを買うか、どこかで廃車を見つけてくるか、もらえる伝手を見つけるしかない。
今は「いーなー」等と宣いながらバイクや雑誌を見たり、真一郎の作業を見学したり時々簡単なお手伝いなどしながらバイクの勉強をしていた。
何となく万次郎がバブの用意をしていることは周りの動きや発言から気付いていたが、アテにするのも何だかいやらしい気がして自分でもこうしてバイクについて学んでいるのだという姿勢を貫いている。

そして、単純に精神の歳の近い真一郎の隣が心地好いという理由もあり武道は頻繁にSSモータースへと遊びに来ていた。底辺フリーターをしていた26歳の自分と比べるとむしろ大人っぽいとすら言える真一郎であるが、万次郎たちの若さを思えば真一郎の方に武道は親近感が湧く。
真一郎からすれば弟のお友達が自分に懐いてくれている状態であるが、時々見せる老成した様な雰囲気が妙に馴染んでいて、隣に置いておいても鬱陶しく無いのが面白かった。

「タケミチって結構ドライだよなぁ」
「へ? え? そうですか??」

弟たちと遊んでいる時は年相応にはしゃいだり馬鹿やっているみたいであるが、ジッと自分の作業を見て覚えようとしている時や、雑誌を捲っている時の伏せ気味の瞼にどこか色気すら感じていた。
声を掛ければまた年相応の可愛らしさに戻るその表情の移り変わりは一瞬で、どちらが本物の武道なんだろうという疑問と、どちらかが偽りという事も無いのだろうと思わせるだけの自然さがあった。

「おー、マンジローから話聞いてるけどよぉ。誰よりも命を大事にするけど他は気にしねぇらしいじゃん」
「まぁ、死ななければ安いとは思ってますね!」

良い笑顔でそう言い切る瞳の奥にもやはり歳不相応な信念が真一郎には見えた。
キラキラと輝く青の奥に見える黒く落ち着いた箇所がある。それが武道の魅力の一つなのだろう、と弟が懐く理由を垣間見る。

「死ななけりゃ、ってそりゃ死なねぇだろ」
「ふふ、そうですね。そうやって笑って過ごせる様に俺も頑張るんで!」

その黒い瞳に影は無く、ただただ落ち着いた色合いだけがある。
黒龍の初代総長をしていたという経緯から真一郎は色々な人間を見てきた。その中にはもちろん大人びた奴もいたし、歳の割に落ち着いた奴もいた。
しかし、武道のソレは今まで見た誰とも違うもので、使命感と慈愛が混ざった様な色をしているとしか真一郎にも分からない。

「……」

武道のそんな目が、会った事も無い親というものを思わせて万次郎たちを惹き付けるのだろう。14の身空でいったい何を背負っているのか、と心配にならないことも無いが武道が選んでこの店に遊びに来ている事にも気が付いていた。
自己管理もそこそこできるのだろう。保護者としての自分を求められない居場所としてこの店を選んでいるのだと真一郎は察していた。

「ま、お前がやりたいようにやるのがいいだろ」

薄暗くなってきた外に目を遣り、そろそろ今日の帳簿を付けてしまうかと店じまいの準備を始める。ソレに気付いて武道も店内の清掃やのぼり旗の片づけを手伝った。
武道のそういう微妙に気が利く所も真一郎は気に入っていた。


・・・


レジも閉めてシャッターを下ろす。
商店街では不良少年たちの集まるちょっと治安の悪い店という事で有名なSSモータースであるが、武道がお手伝いをしているのを見ると微笑まし気に声を掛けてくるご近所さんが多い。
真一郎自身は町内会でも若連の一員を務めているため親しまれているが、店に来る客は少し怖がられている方が多い。その中で武道は髪型こそヤンチャであるがベビーフェイスと大きくは無い体躯、なによりも目が合うとニッコリと笑って元気に挨拶をしてくれる所がご近所さんに評判だった。
その接客慣れしている様にこのまま高校生になったら看板息子として雇いたいとちょこまかと閉店作業を手伝う様子を眺めながらぼんやりと考える。

シャッターで外の灯りも届かなくなった店内で働いていると、客というよりは本当に遊びに来た近所の子どもの様だった。

「ありがとな、武道」
「いえいえ! まだ全然買えないのにいさせてもらえてるんですから!!」
「ハハ、気にしなくてもいいのに。バイト代としてコンビニで何か奢ってやろうか」
「いいですってばぁ!」

後は帰るだけの状態で、何だか離れがたい気持ちでじゃれ合い始める。
客用のソファにボスンと音を立てて座って肩に腕を回す。ウリウリとリーゼントを崩す様に頭を撫でればギャーギャー文句を言いつつも武道は楽しそうに笑った。

強い武道も嫌いでは無いが、こうして年相応に笑う様を見るとやはり可愛いと思ってしまうのは自分が長兄だからだろうかと考えてすぐに打ち消した。
自分が武道に感じているのは万次郎やエマに対して感じる様な庇護欲や親心ではない。その程度の自己分析はできているつもりだった。

自由にやらせてやりたい気持ちと、それでもこの店へと帰ってきてほしい気持ちの二律背反に心がざわつく。万次郎とイザナと3人でこの店を回すことが夢であるが、もし二人が別の道を選んでも真一郎はその背中を押して笑う事ができると確信していた。
しかし、武道に関しては最後にはこの店に、自分の下に帰ってきてほしいと思ってしまう。
武道にとっては此処はホームではないことは分かっている。武道には武道の家族がいて、所属する東卍では隊長まで務めている。どちらかと言えば真一郎の元こそが出先であることは分かっているが、安寧を求めて此処にいることはアドバンテージだと言えるだろう。

しかし、安寧だけを与えてトンビに油揚げを搔っ攫われる様な事態は避けたいと真一郎は考えていた。恋も喧嘩も最弱王と言われる所以にはそういった慎重すぎる所、優しすぎるところにあると今なら分かる。
しかし相手は未成年。どうしたものか、と考えながらスキンシップを繰り返しているとくすぐったそうに武道が身をよじった。

「んっ、真一郎くん、も、くすぐったいですよぉ」
「……」

コレだ。
あまり倫理的によろしくないと分かっているが冗談で済ませられる範囲でヤればいいのだ、と開き直る。幸いシャッターが閉まっているから外から見えることは無い。懸念事項は2年前にイタズラで窓ガラスを割られた時に取り付けた監視カメラであるが、武道自身が警察に訴えたりなどしなければ見られる事も無いだろう。元関東一の暴走族の総長がやっている店にイタズラをするなど御礼参りかと警戒したが、走り去る二人組はフードを被った子どものものだった。弟の誕生日直前だと言うのにガラスとカメラで手痛い出費だったといまだに覚えている。

「何だよ~、くすぐったいのここかぁ?」
「ぎゃっ、ちょ、まっ……ふっ、ぅあっ♡」

ふざけたフリをして武道の着るパーカーの裾に手を突っ込むと最初は同じくふざけたノリで上げていた悲鳴がだんだん艶やかさを帯びる。
わき腹をつっとなぞり上げるとビクリと仰け反る様に腰が跳ねた。頭を打ってしまわない様に支えつつ、ソファに押し倒すと真一郎はニヤリと笑った。

「お前超くすぐったがりだな♡」
「ひぅっ♡」

いじめっ子が獲物を見つけたと言わんばかりのその表情に武道は甘い悲鳴を上げた。

「おりゃっ」
「ふっ♡ ハッ♡ ぁっは♡」

脚の上を跨いで拘束して、まくり上げられた腹に手を這わせる。工具を扱い慣れた節くれだった大人の男らしい指がさわさわと触れるか触れないかの所で行き来する。
いっそガッツリ掴まれたりなどしていればくすぐったくないのに、イタズラ目的の真一郎はフェザータッチを繰り返す。その度にビクビクと腰が跳ねてゾクゾクした快感の電流の様なものが背筋を駆け抜けていった。

「ひっ♡ ひぁっ♡ もっ♡ らめっ♡ ひはっ♡」
「んー? 何て言ってっか分かんねぇなぁ?」
「ふっ♡ ん♡ ぁあっ♡」

笑うというよりはとうの昔に甘い喘ぎと化したその声は隠しようも無く性交を匂わせるもので、コレはヤバいと思いつつもイタズラ気分のフリをする真一郎に武道は強い抵抗が出来ない。
そうこうしているうちに不埒な指先がわき腹から這い上がって肋骨をなぞりだす。まくりあがったシャツの下、不良少年らしく引き締まった脂肪の薄い身体を眺め、ちゃんと鍛えてはいるのだなと感心する。
ソレと同時に少し色の違う箇所を見ると、弟から聞いていた武道のファイトスタイルに心配になる。先陣を切り、身を盾にするやり方は自分が現役時代に散々やってきたことであるが、好きな子にソレをされるとかつての不良の頂点だった自分を「ちっちゃい子が真似するだろ!」と叱り付けたくなる。
幸い、武道はそのファイトスタイルが身体能力的にも性にも合っていたらしく、耐久性と回復力が他の同年代と比べて段違いに高いため不良でいつづけるためには仕方が無い事ではあると理解はできる。それでも変色した治りかけの皮膚を見れば少しだけ悋気も起こすというものだった。

「あーぁ、こんな怪我ばっかしやがって……」
「ひっゃあん♡♡♡」

少しお仕置きとでもいう様に赤く充血した胸の先をキュッと摘まみ上げると一層甘く高い嬌声が店内に響いた。
流石にコレはまずいと武道は顔を蒼褪めさせて真一郎を見るが、じゃれ合いに性感を感じてしまった武道を気味悪がるどころかニヤニヤと笑っていた。

「お前、乳首感じる方か」
「ちがっ、ぁあんっ♡♡♡」

否定の言葉を返そうと思ったのに言葉の途中でまたその声は嬌声に変わってしまう。
朱鷺色の粒を親指の腹で転がせば武道は背中を仰け反らせて喘ぐ。逃げられない状態にしているのは自分であるが、武道のその様が弱い箇所を差し出されている様に見えて真一郎は留飲を下げた。
不可抗力で付いた数日で消えてしまう痣などよりもこの一瞬だけでも自ら差し出される性感帯の方が余程価値がある、と。

「ひっ、ぁ♡ んぅ♡」

男の硬い指先が充血して膨らんだ粒の弾力を楽しむ様に柔らかく揉み込む。その止め処ない快感に気が散って、武道はソファに縋りつきながら腰を揺らす事しかできない。
腰が揺れる度にその上に乗った真一郎も揺れるがバランスを崩すようなことは無く、ただ一方的に蹂躙される。

「ハハッ、かーわい♡ たまにいるよなぁ、最初からモロ感の奴」

ここまでトロトロになってしまう奴は流石におらず変な空気になる事も無かったが、この程度のじゃれ合いなら現役時代にもふざけて男同士でしていた程度だった。当時は男の乳首など無意味なものだと思っていたが、こうして乳首一つでメロメロになってしまうのが武道であるなら男であることなど関係ないと思えた。

「あっ♡ うぁっ♡ らめぇ♡」
「えー? お前気持ちよさそうなのに?」
「んっ♡ やっ♡ れすぅ♡ イッちゃ♡ あぁっ♡」
「え? マジ? 乳首でイケんの? 見せて見せて」
「やっ♡ やらっ♡ んっ♡ んぅううっ♡♡♡」

好奇心に隠した下心がムクムクと育って隠せなくなる。武道のモノが自らの下で萌している事は分かっていたがそこまで追い詰められているとは思っていなかった。このまま続ければ果てるのかと思えば俄然やる気がおき、その顔を見たいと思ってしまう。
思春期の子どもに対して酷いことをしていると自覚しつつも、欲が抑えきれない。その上気した肌や濡れた瞳にゾクゾクと興奮が背筋を伝ってしまう。大人の様な使命感や慈愛はなく、子どもの無邪気さとは程遠い、自身の身体感覚のみに支配された淫蕩な姿に眩暈がする。

一定のリズムで与えられる刺激になすすべなく武道は追い詰められる。気持ちが良い事しか考えられなくなって、その指先に全てを支配される。

「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」

本気になって逃げたら逃げられたかは分からないが、口先だけで拒否をしても全力で逃げようとは思わなかったのは武道だった。それは久方ぶりに感じた性感に流されたからであり、武道自身が快楽を望んだからでもあった。

要は「あ、そこも人に触られたら気持ちいいんだな」というスケベ心だ。
誰かと恋愛関係になるつもりは無いが、依存されない程度の性欲の発散は棚から牡丹餅程度には嬉しく思ってしまう。武道は自分の欲に素直な男だった。

「ひ♡ ぁ♡ あ゛ぁぁあああっ♡♡♡」

その結果、白い喉を晒し、目を見開いて、絶頂を迎えた。ガクガクと腰を震わせて、許容範囲を超えた快感に脳を蕩けさせて快楽を享受する。

「ふ、ぁ♡」

絶頂の余韻でフワフワとする頭と体をその気怠い心地好さに浸して呼吸をする。その息遣いすら色を帯びており、自身の上に跨る男が舐める様に眺めている事にも気付いていた。
しかし、それもまた悪くないと思ってしまう。過去にしてきた未来の中で、男というものを武道は知ってしまっていた。身体こそ清かったがその記憶の中には欲に食い尽くされる気持ち良さが刻み込まれていた。
食べられてしまいたいという欲と、最後までしてしまうのは依存の引き金になる可能性があると分かっている理性がせめぎ合う。

そんな武道の心情を知らず、真一郎は労わる様に頭を撫でた。

「しんいちろぉくん?」
「ん、気持ち良かったなぁ?」
「う、ん……」

少し汗をかいた額に唇を寄せて、まるで愛玩する様に抱きしめられる。自身の股間と兜合わせになる様に鎮座する真一郎のモノはしっかりと反応しているというのに取り出す様子は無い。
何だか流れが変わったと思っていると身体を離されてジッと顔を見られた。

「?」
「期待してくれて嬉しいけど、これ以上は犯罪だからな。大人になったらまたしようぜ」

ニヤリと笑って手離されると安堵と共に少しの悔しさを感じる。乱されたのは自分だけか、と。
ソレを口にする前に第三者の声が響いた。

「あー、悪ィんスけど、既に犯罪っスよ。未成年略取」
「ドラケンくん!?」
「堅坊!?」

二人が情事に夢中になっているうちに裏口から入ってきていたらしい。
据わった目で龍宮寺が真一郎を見ていた。

「いくらシンイチローくんと言えどタケミっちをどうこうするのは許せねぇっスわ」

龍宮寺は中学卒業と同時にこの店に就職することが決まっている。下積みを積んで独り立ちすることが目標だった。
雇用主に楯突いてしまい、コレは内定取り消しもあるかもしれないと思いつつも、自身の恩人である武道をどうこうさせるワケにはいかないとジッと真一郎を見た。
そんな龍宮寺にコレはヤバいと思ったのは真一郎ではなく武道の方で、とっさに真一郎を庇う様に龍宮寺の前へと出た。

「ちょっと待ってください!」
「あ゛?」
「ひぇ……」

凄まれ一瞬だけ怯むが、こんなことでこの割と上手くいっている時間軸をやり直しにするワケにはいかないのだ。

「別にコレは無理矢理とかじゃないです」
「何言ってんだ。あんな下半身ガッチリ拘束までされて」
「俺の趣味です」
「は?」

真面目腐った顔でとんでもないことを宣いだす武道に龍宮寺はあっけにとられた様に目を見開いた。
武道も男だという事は分かっているが医療班(自称)という事もあり、龍宮寺は武道にどこか清廉なイメージを持っていた。そんな武道からの発言で固まった龍宮寺に武道はコレだ、と言葉を続けた。

「そりゃ、雇用主と友達が寝てんのは気まずいかもしれねぇですし、職場でコトに及んだのは悪かったっスけど、それなら俺も同罪です」
「……。タケみっち、いくらシンイチローくんつったって庇うこたねぇぞ」
「別に庇っちゃいねぇです」

放心から気を取り直し、凄み直すも武道は引かない。こうなると梃子でも動かないのだという予感がひしひしとする。この時点で敗色が濃厚であると自覚しつつも、自分の知っている武道のイメージと今の発言の違いが上手く合致せずにいっそ責め立ててしまう。

「じゃあ何だテメェはテメェの意思で男に乳首弄られてあんあん喘いでたってか?」
「そうっスよ。何か悪いっスか?」

思いきりガンを付ける龍宮寺に敗けじと睨み返す。

「……」
「……」

互いに譲らない睨み合いに先に根負けをしたのはやはり龍宮寺だった

「あ゛~~~~~!」

現実を受け入れられずに天を仰ぎつつ頭を掻きむしる。
先ほどまでの煽情的な様と、今の堂々とした男らしい様のギャップに心の処理が追い付かずまずは事実だけを口にする。

「つまりお前は本当にエロい事が好きで合意でヤッてたワケだ!?」
「そうです。オレだってオトコノコですから、挿入以外ならヤりたい盛りです」

混乱のままに煽るような口調になるが武道は揺らがない。本当に頑固な男だった。

真剣な顔でろくでもないことを言っている中学生二人を真一郎は一番まずい立場である事を理解しつつも面白いと思って眺めてしまう。この流れなら武道が勝つだろうと油断をして口を挟んだ。

「挿入以外?」
「はい、挿入以外ですね。俺、セックスはしたくないんで」
「……」

そのあっさりした物言いに少しだけ微妙な気持ちになりつつも、内心この流れで話を逸らせると真一郎はガッツポーズをとる。
ソレを知ってか知らずか龍宮寺も武道の発言に気を取られ始めた。

「お前のたまに見せるその妙なこだわりは何なんだ……」
「何かセックスまでするのは違うんスよねぇ。恋人でもないのにソレは嫌といいますか」
「えぇ……?」

実際の所は、セックスまですると相手に依存される確率が上がると危惧しての事だったが完全に嘘でも無い。男としてエロいことは常に好きであるが、恋人がほしいという感覚はとうの昔に無くなっていた。

「こう、好奇心からの抜き合いとかはアリっスけど、お互いにドロドロに求め合うのは違うと言いますか……。目的がエロなら良いんスけど、俺自身を求められるのはちょっと困るんスよねぇ」

コレが女の子への発言であるなら最低であるが、歳上男に手を出されての発言である。本気で言っている事が伺えて龍宮寺は少しだけ頭が痛くなる。

「お前……んなこと言ってるとそのうちマジで食われるぞ」
「まー、そん時はそん時で」
「……」

全く危機感の無い武道に龍宮寺は怒りと心労で上手く言葉が出ない。何を言っても無駄であると分かっているがこのまま無かったことにするのだけはいけないと分かっていた。
そして、いっそもうコレは武道のやり方に乗ってしまおうと結論付けた。

「分かった。お前がそういう感じなら俺だってお前の事そういう風に扱うからな」
「えっと、具体的には……?」
「次ケガしたら看病してくれ、ナース服プレイしようぜ」
「よし来た! でも怪我してほしくないんで、しなかったらでお願いします!」

目をキラキラさせて龍宮寺の話に乗る武道はそれまでのやり取りを忘れてしまっているのか、ナースプレイに完全に気をとられていた。
ソレを少しだけ羨ましく思いつつも真一郎はコレで完全に煙にまけたと安堵する。





「あ、シンイチローくんは次タケみっちに触ったらマイキーに通報でタイキックっスからね」
「俺死ぬやつじゃん」